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設計資料

熱計算

被加熱物の加熱に必要な電力とともに潜熱量・放熱量を個別に計算し、「必要電力の総和」を求めます。

実際に数値を入力して計算ができる熱計算プログラム放熱計算プログラムも参照ください。

表で簡単に必要ワット数がわかる加熱電力早見表もあります。

1.基本式

基 本 式:熱 量=比熱× 質量(密度×体積)× 温度差ΔT

熱量の換算:1 J(ジュール)=2.778×10-7 kWh =2.389×10-4 kcal

1 cal(カロリー)=1.163×10-6 kWh =4.186 J

  • 熱量のSI単位はJ(ジュール)で表す。従来はcal(カロリー)が用いられており、ここではcalによる計算式も併記する。
  • 電力Wと熱量Jの関係:1W=1J/s(毎秒1Jの仕事率)
  • 電力量=電力P×時間:電力と、電力が仕事をした時間との積は電力量(電気の仕事量)といい、電力量=熱量として下式 (1)、(2) を得る。

2.ヒーターの電力を求める計算式

ヒーター電力 P(W)の計算式 従来のヒーター電力 P(W)の計算式(熱量をcalで計算)
  • t時間で被加熱物の温度をΔT℃上昇させる場合

    P = 0.278 × c × ρ × V × ΔT/t ――― (1)

  • t分で被加熱物の温度をΔT℃上昇させる場合

    P = 0.278 × 60 × c × ρ × V × ΔT/t ― (2)

  • t時間で被加熱物の温度をΔT℃上昇させる場合

    P = 1.16 × c × ρ × V × ΔT/t ――― (1)’

  • t分で被加熱物の温度をΔT℃上昇させる場合

    P = 1.16 × 60 x c × ρ × V × ΔT/t ― (2)’

電力:P  W(ワット)

時間:t  h または min (1 h = 60 min)

比熱:c  kJ/(kg・℃) または kcal/(kg・℃)

密度:ρ  kg/m3 または kg/L(キログラム/リットル)

体積:V  m3(標準状態)または L(標準状態)

流量:q  m3/min(標準状態) または L/min(標準状態)

温度差ΔT  ℃=目的温度T ℃-初期温度T0

★物性値は参考文献などを参照し、単位をそろえるように気を付けること。参考データ・計算例

3.加熱に要する電力

被加熱物の加熱に必要な電力とともに潜熱量・放熱量を個別に計算し、「必要電力の総和」を求めます。

No. 加熱に必要な電力 計算式 従来の計算式
(熱量をcalで計算)
①P1 流れない液体・固体

体積Vをt[ ](時間)で

温度差ΔT(T0→T)℃ に加熱する電力

P1=0.278×c×ρ×V×ΔT/t

P1

P1=1.16×c×ρ×V×ΔT/t

P1

c=[ ]、ρ=[ ] kg/m3・kg/L

V=[ ] m3(標準状態)・L(標準状態)

Δt=[ ]℃

(= T[ ]℃-T0 [ ]℃)

②P2

流れない気体

体積Vをt[ ](時間)で

温度差ΔT(T0→T)℃ に加熱する電力

P2=0.278×c×ρ×V×ΔT/t

P2

P2=1.16×c×ρ×V×ΔT/t

P2

c=[ ]、ρ=[ ] kg/m3・kg/L

V=[ ] m3(標準状態)・L

ΔT=[ ]℃

(= T [ ]℃-T0 [ ]℃)

③P3 流れる気体・液体

流量q[ ] m3/min・L/minを温度差ΔT(T0→T)℃ に加熱する電力

P3=0.278×60×c×ρ×q×ΔT

P3

P3=1.16×60×c×ρ×q×ΔT

P3

c=[ ]、ρ=[ ] kg/m3・kg/L

q=[ ] m3/min(標準状態)またはL/min(標準状態)

ΔT=[ ]℃

(= T [ ]℃-T0 [ ]℃)

④P4

加熱槽・配管

加熱槽(容器)・配管の体積 Vをt[ ](時間)で温度差ΔT(T0→T)℃ に加熱する電力

P4=0.278×c×ρ×V×ΔT/t

P4

P4=1.16×c×ρ×V×ΔT/t

P4

c=[ ]、ρ=[ ] kg/m3・kg/L

V=[ ] m3・L

ΔT=[ ]℃

(= T [ ]℃-T0 [ ]℃)

⑤P5

潜熱

加熱物に付着している水分  体積Vをt[ ](時間)で気化させるのに必要な電力

P5=0.278×L×ρ×V/t

P5

P5=1.16×L×ρ×V/t

P5

L=[ ]、ρ=[ ]、

V=[ ]潜熱量Lは下記表2参照

⑥P6

放熱1

加熱槽(容器)または配管表面からの放熱量を補うための電力

容器表面積A m2、放熱損失係数 Q W/m2

P6=A×Q

P6

P6=A×Q

P6

A=[ ]、Q=[ ]

放熱損失係数Qは 表3を参照

⑦P7

放熱2

その他の放熱を補う必要電力

表面積A m2、放熱損失係数Q W/m2

P7=A×Q

P7

P7=A×Q

P7

A=[ ]、Q=[ ]

放熱損失係数Qは 表3を参照

⑧P8 合計

必要電力の総和:①から⑦で計算した項目の総和を計算します

4.総合電力P

電圧変動、製作誤差その他を加味し安全率を乗じます

P=P8×安全率 ・・・(例えば ×1.25)

P=

物性値・計算例

ここに示す比熱や密度などはあくまでも参考値です。
お客様が実際にお使いになる条件に合わせて、参考文献などから適切なデータを参照してください。

比熱c 密度ρ (参考値)

表1 比熱c 密度ρ (参考値)

物 質 名温度℃比 熱密 度
kJ/(kg・℃)kcal/(kg・℃)kg/m3kg/L
空 気01.0070.241.251
201.0070.241.161
窒 素01.0420.251.211
水 素014.1913.390.0869
204.181.0998.21.00
Nt3 (液体)204.7971.156120.61
潤滑油401.9630.478760.88
鋳鉄4C以下200.4190.1072707.3
SUS 18Cr 8Ni200.50.1278207.8
純アルミ200.90.21527102.7
純 銅200.390.0989608.96

潜熱量 L

表2 潜熱量 L

物質名 kJ/kg kcal/kg
2257 539
アンモニア 1371 199
アセトン 552 125
トルエン 363 86
ブタン 385 96
メチルアルコール 1105 264
エチルアルコール 858 205
オクタン 297 71
氷(融解熱) 333.7 79.7

放熱損失係数 Q

表3 放熱損失係数 Q

単位[W/㎡]

保 温 \ 温度差ΔT 30℃ 50℃ 100℃ 150℃ 200℃ 250℃ 300℃ 350℃ 400℃
保温なし 300 600 1300 2200 3400 5000 7000 9300 14000
t50 40 70 130 200 280 370 460 560 700
t100 25 35 70 100 140 190 250 300 350
水表面 1000 3000 105
油表面 300 500 1400 2800 4500 6000

熱計算:例題1

熱計算:例題1 水加熱 <表の右側は、熱量をcalで計算した結果を示します。>

タンク(500×500×800)の中の水200 L(リットル)を20 ℃から60 ℃に、1時間で加熱するヒーター電力。

条件:水の入っている容器は質量20 kg(ステンレス製)表面積2.1 m2で断熱材なし、外気温度10 ℃とする。

①水加熱

 c=4.18 kJ/(kg・℃) ρ=1kg/L V=200L ΔT=40 ℃

 P1=0.278×4.18×1×200×40

 =9296W

①水加熱

 c=1 kcal/(kg・℃) ρ=1kg/L V=200L ΔT=40℃

 P1=1.16×1×1×200×40

  =9280W

④容器加熱

 c=0.48 kJ/(kg・℃) ρ×V=20 kg ΔT=40 ℃

 P5=0.278×0.48×20×40

 =107W

④容器加熱 

 c=0.12 kcal/(kg・℃) ρ×V=20kg ΔT=40℃

 P5=1.16×0.12×20×40

 =111W

⑥容器からの放熱

 表面積 A = (0.5×0.5)×2+(0.5×0.8)×4 = 2.1 m2

 保温なし ΔT=50℃ における放熱損失係数Q=600 W/m2

 P7=2.1×600

 =1260W

⑥容器からの放熱 

 表面積 A = (0.5×0.5)×2+(0.5×0.8)×4 = 2.1 m2

 保温なし ΔT=50℃ における放熱損失係数Q=600 W/m2

 P7=2.1×600

         =1260W

◎総合電力 ①+④+⑥

 P=(9296+107+1260)×1.25

  =13329W

  ≒13kW

◎総合電力 ①+④+⑥

 P=(9280+111+1260)×1.25

  =13314W

  ≒13kW

熱計算:例題2

熱計算:例題2 空気加熱 <表の右側は、熱量をcalで計算した結果を示します。>

流量10m3/minで温度0℃の空気を200℃に加熱するヒーター電力。

条件:ケーシング・ダクトの質量は約100kg(ステンレス製)保温の厚さ100㎜で表面積5㎡、外気温度0℃とする。

③空気加熱

 c=1.007 kJ/(kg・℃)  ρ=1.161kg/m3 q=10 m3/min ΔT=200 ℃

 P4=0.278×60×1.007×1.251×10×200

 =42025W

③空気加熱

 c=0.24 kcal/(kg・℃) ρ=1.251 kg/m3 q=10 m3/min ΔT=200 ℃

 P4=1.16×60×0.24×1.251×10×200

 =41793W

④ステンレスの加熱

 c=0.5 kJ/(kg・℃) ρ×V=100 kg ΔT=200 ℃

 P5=0.278×0.5×100×200

 =2780W

④ステンレスの加熱 

 c=0.118 kcal/(kg・℃) ρ×V=100kg ΔT=200℃

 P5=1.16×0.12×100×200

 =2784W

⑥ケーシングやダクトからの放熱 

 表面積 A = 5 m2 

 保温t=100 ΔT=200℃ における放熱損失係数Q=140 W/m2

 P7=5×140

 =700W

⑥ケーシング・ダクトからの放熱 

 表面積 A = 5 m2 

保温t=100 ΔT=200℃ における放熱損失係数Q=140 W/m2

 P7=5×140

 =700W

◎総合電力 ③+④+⑥

 P=(42025+2780+700)×1.25

  =56881W

  ≒57kW

◎総合電力 ③+④+⑥

 P=(41793+2784+700)×1.25

  =56596W

  ≒57kW