設計資料
温度上昇によるシーズヒーターの変化
シーズヒーターにおける温度による電力・長さ・絶縁抵抗の変化
シーズヒーターの特性 目 次
1.温度による電力・長さ・絶縁抵抗
シーズヒーターに通電して温度が上昇したとき考慮すべき点と、電力・長さ・絶縁抵抗の変化を表1にまとめた。
一般的な注意事項
- ヒーターは伸びる。
- 物質は固有の線膨張係数に従い温度変化により伸縮する。物理的干渉による応力の逃げを考慮する。
- 取り合いとともに、ヒーターの一端は軸方向に自由な構造とするなどの工夫を要す。
- 冷間(常温)時の電気抵抗と、熱間(使用温度)時の電気抵抗は異なる。=ヒーター電力も温度により変化する。
- 熱間(使用温度に加熱)時には電気抵抗は大きくなり、冷間(常温)時に比べてヒーター電力が減少する。
- 絶縁抵抗も高温になるほど急激に低くなる。
- シーズヒーターを400℃以上で使用する場合は、雰囲気・湿気など他の要因も考慮すると絶縁劣化が必至である。
このような場合には、マグネシアによる基礎絶縁の他に二重絶縁構造となる設計をする。 - 500~600℃を越える場合、保温材や耐熱材料、二重絶縁構造、温度過昇防止機能など、ヒーターの性能・機能と共に安全性に対する考慮も必要となる。
- 500~600℃を越える場合、温度コントロールも精度を上げることが難しく、高温での使用には細心の注意が必要である。(場合によってはシーズヒーターでの加熱は不可能)
- シーズヒーターを400℃以上で使用する場合は、雰囲気・湿気など他の要因も考慮すると絶縁劣化が必至である。
表1 温度上昇によるヒーター電力・長さ・絶縁抵抗
項 目 | 発熱線温度(ヒーター内部)[℃] 注1 | 備考 | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
20℃ (常温) |
100℃ | 200℃ | 300℃ | 400℃ | 500℃ | 600℃ | 700℃ | 800℃ | 900℃ | ||
ヒーター電力 (常温=1とする) |
1.0 | 0.988 | 0.973 | 0.954 | 0.932 | 0.906 | 0.880 | 0.863 | 0.854 | 0.847 | 注2 |
電気抵抗変化 (常温=1とする) |
1.0 | 1.012 | 1.027 | 1.048 | 1.072 | 1.103 | 1.158 | 1.158 | 1.170 | 1.180 | - |
ヒーター 伸び率[%] |
0 | 0.17 | 0.35 | 0.53 | 0.72 | 0.82 | 1.12 | 1.33 | 1.64 | 2.07 | 注3 |
絶縁抵抗 [M・オーム] |
1000以上 | 1000 | 500 | 200 | 100 | 50 | 10 | 1 | 0.5 | 0.1 | 注4 |
- 注1:温度は、発熱体(電熱線)の温度を示す。
シーズヒーターの表面温度は、これより50~100℃程度低くなるのが通例。 - 注2:ヒーター電力は、発熱体が常温で1kWあったとすると、500℃では906Wとなり、約10%電力は減少する。
- 注3:ヒーター伸び率は、ステンレス製の管の場合。
(常温で1mの長さのヒーターは、500℃では約8mm伸びて1008mmとなる) - 注4:絶縁抵抗は、ヒーターの碍管(がいかん)と発熱体(電熱線)を絶縁しているマグネシア(MgO)の特性を
示したもの。
2.温度上昇によるヒーター電力・長さ
実際のシーズヒーターでは、温度上昇によりヒーター電力・長さはどう変化するのか一例を表2にまとめた。
シーズヒーター(ストレート)の仕様は下記の通り。
- 電力:2kW(2000W) 200V単相
- 電気抵抗:20オーム
- 電気抵抗:20オーム
表2 温度上昇によるヒーター電力・長さ
項 目 | 20℃ | 100℃ | 200℃ | 300℃ | 400℃ | 500℃ | 600℃ | 700℃ | 800℃ | 900℃ |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ヒーター電力[W] | 2000 | 1976 | 1947 | 1908 | 1866 | 1813 | 1759 | 1727 | 1709 | 1695 |
電気抵抗変化 [オーム] |
20.0 | 20.2 | 20.5 | 21.0 | 21.4 | 22.1 | 22.7 | 23.2 | 23.4 | 23.6 |
ヒーターの長さ [mm] |
2000.0 | 2003.0 | 2007.0 | 2011.1 | 2014.0 | 2016.0 | 2022.0 | 2027.0 | 2033.0 | 2041.0 |
3.電熱線の太さによる導体抵抗Rと質量
代表的な例を用い、電熱線の線径を変えたときR=5Ω、10Ω、50Ω、100Ωのヒーター長さ、および質量を試算した。
表3 電熱線の太さによる導体抵抗と質量
発熱線の種類 |
ヒーターエレメント(内部電気抵抗値別) |
ワ ッ ト 密 度 |
|||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
線 径 |
抵抗値R [Ω/m] |
質 量[g/m] |
5Ω |
10Ω |
50Ω |
100Ω |
|||||
100Vで2kW 200Vで8kW |
100Vで1kW 200Vで4kW |
100Vで200W 200Vで800W |
100Vで100W 200Vで400W |
||||||||
長さ [m] |
質量 [g] |
長さ [m] |
質量 [g] |
長さ [m] |
質量 [g] |
長さ [m] |
質量 [g] |
||||
0.2 |
39.1 |
0.231 |
- |
- |
- |
- |
1.30 |
0.04 |
2.56 |
0.08 |
大 ・ ・ ・ 中 ・ ・ ・ 小 |
0.4 |
9.79 |
0.924 |
- |
- |
1.02 |
0.9 |
5.11 |
4.7 |
10.22 |
9.4 |
|
0.7 |
3.20 |
2.83 |
1.56 |
4.4 |
3.13 |
8.8 |
15.63 |
44.2 |
31.25 |
88.4 |
|
0.8 |
2.45 |
3.69 |
2.04 |
7.5 |
4.08 |
15.1 |
20.41 |
75.3 |
40.82 |
150.6 |
|
1.0 |
1.57 |
5.77 |
3.19 |
18.4 |
6.37 |
36.8 |
31.85 |
183.8 |
63.69 |
367.5 |
|
1.2 |
1.09 |
8.31 |
4.59 |
38.1 |
9.17 |
76.2 |
45.87 |
381.2 |
- |
- |
|
1.4 |
0.80 |
11.3 |
6.25 |
70.6 |
12.50 |
141.3 |
- |
- |
- |
- |
|
1.6 |
0.61 |
14.8 |
8.20 |
121.3 |
16.39 |
242.6 |
- |
- |
- |
- |
|
2.0 |
0.39 |
23.1 |
12.82 |
296.2 |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
注意
- 100V用のヒーターを200Vで使用すると、電流は2倍になりヒーター電力は4倍。
- ワット密度[W/c㎡]は、線径が細くなれば大きくなるが寿命は短くなる。
- この表は比較参考のためのデータで、実際は仕様に合った線径を選定する。線径も代表的なものだけを示した。
- この表では温度上昇による抵抗値の増加は考慮していない。