ヒーターの空焼きとはなんですか
何らかの理由により、ヒーターから加熱する物質(被加熱物)に熱が十分に伝わらず、ヒーターが異常高温になってしまう状態を言います。
ヒーターの寿命が短くなり、場合によってはヒーターが焼損(絶縁不良・断線)し大変危険です。
例えば、熱を伝えにくい物質中で高いワット密度のヒーターを使用すると、ヒーターが高温になって損傷(絶縁破壊・断線)することがあります。
場合によっては異常高温による火災の発生も考えられ、大変危険です。以下にヒーターの空焼きといわれる具体的な例をまとめてみました。
液体加熱の場合
加熱容器の液レベルが低下したり、密閉容器で空気抜きを怠ったり、ポンプで液体と同時に空気が送りこまれたりすることにより、ヒーター発熱部が空気中に露出している場合。事例はヒーターを空焚き(空焼き)するとこうなりますを参照ください。
日本ヒーターでは、液体加熱用に設計されたヒーターには「空焼き厳禁」などと表示して注意を促しています。
<防止対策>
- フロートスイッチ等を設け、設定水位より低い場合通電しない構造とする。
- 2. 温度コントロールとは別にヒーターエレメント表面にセンサーを取り付け、設定温度で動作する接点(ヒーター本体または制御盤内)を設ける。
ヒーター保護温度でヒーター通電を中止する構造とする。(この対策は直接的な空焚き防止対策とはなっていません。センサー位置や感度によっては空焚き後のヒーター保護としても有効に機能しない場合もあります。)
気体加熱の場合
装置の構造上、送風される機構であるのに送風されないままヒーターに通電されていたり、ヒーターと同時に送風機が止まってしまう場合。
<防止対策>
- 送風機とヒーターの制御器で送風機が稼動しないとヒーターが通電しない構造(ヒーター単独通電防止)とする。=インターロック
- ヒーターを通電停止後も送風機がしばらく回り続ける遅延回路を設ける。
- ヒーターエレメント表面にセンサーを取り付け、温度設定接点(ヒーター本体または制御盤内)を設ける。ヒーター保護温度でヒーター通電を中止する構造とする。
金属加熱の場合
ヒーターが加熱する金属とうまくかみ合わず(線接触や部分接触など)、ヒーターとの隙間(空気層)が多い場合。
<防止対策>
- 面・穴加工を精密な設計仕様に基づいた構造とする。隙間がどうしても残ったときは熱伝セメントで埋める。
- 熱歪みが考えられるものは、サポートを十分に施工する構造とする。
- ヒーターエレメント表面、または最も近い部分に温度センサーを取付け、温度設定接点(ヒーター本体または制御盤内)を設ける。ヒーター保護温度でヒーター通電を中止する構造とする。
空焼きヒーターとは?
- 紛らわしい表現でこの表現は推奨できませんが、空気加熱用のヒーターを空焼きヒーターと呼ぶことがあります。
- 空気は断熱材として使われるように、熱を伝えにくい性質をもっています。自然対流で空気を加熱する場合などでは、ヒーターエレメントのワット密度はもちろん、ヒーター材料・電線・部品などの耐熱材質、および二重絶縁構造の採用など、あらゆる条件を考慮した上で「空焼き状態(通常よりも高い温度)」で使用することを意味します。
注意
加熱する物質が低沸点・高温で不安定、あるいは揮発性が高いといった条件によっては、上記のヒーター表面温度をモニタする過昇防止機構を使用できないことがあります。
空焼き発生から温度センサーが感知し、防止機構が働くまでに時間がかかることがあります。その間に設定温度を超してしまわないよう考慮する必要があります。
空焼き防止はヒーター寿命を長くすることだけが目的ではなく、火災発生など重大な災害を防ぐためにあります。
空焼き(対応)設計でないヒーターを空焼きにした場合、断線・絶縁不良で使用不能になることがあります。この場合新品と交換する必要があります。