ステンレス製のヒーターが腐食してしまいました
いかにステンレス(錆びない)とはいえ、接触する物質と環境によりステンレスも腐食されます
ヒーターにおける腐食については、以下の資料をご参照ください。
なお、各薬品に対する耐食材料表も参照ください。
ステンレスの腐食
ステンレスの腐食 目次
- 全面腐食
- 局部腐食
- 孔食腐食
- 粒界腐食
- 応力腐食
- 間隙腐食
- 腐食疲労
- 高温酸化
a.全面腐食
- ステンレスの表面が腐食環境と接触し、その接触面が全面に渡って腐食される現象です。
- ヒーターに限らず、腐食環境(雰囲気)に適した材料を選定することが大切です。
- 溶接する場合には溶接棒の材質にも注意する必要があります。
- 硝酸のような酸化性液に対してはSUS304タイプや、場合によってはフェライト系ステンレスが使用されることもあります。
- 希硫酸や塩酸のような非酸化性または還元性の酸に対しては、Niの含有量を増加しMoやCuを添加したSUS316タイプが使用されることがあります。
b.局部腐食
- ステンレスの腐食形態の中で最も多いのが局部腐食です。
- この腐食は、ステンレス表面の酸化皮膜が局部的に破壊されて腐食が進行するもので、ときには腐食が貫通して全体が使用不能に陥ることもあります。
- 局部腐食には次の4つの腐食形態があります。
1.孔食腐食
- ステンレスの表面が腐食環境と接触し、表面が局部的に侵され点ないし孔状に腐食される現象です。他の部分はほとんど腐食されないのが通例です。
- これは、ステンレス表面の耐食性を有する不働態被膜が不完全なためにおこります。
- このような場合は、製造工程において(加工後)完全な熱処理を施してひずみや析出物などの影響を除去する必要があります。母材表面を清浄に保つことも重要です。
- また、Mo含有量の高いオーステナイト系ステンレスを使用することもあります。
2.粒界腐食
- オーステナイト系ステンレスは550~800℃(特に650~700℃付近)の温度で結晶粒界にクロム炭化物が析出し、結晶粒界から腐食したり脆化したりすることがあります。
- 粒界腐食に対しては、約1050℃の高温から急冷して炭化物をオーステナイト組織中に完全に固溶させるか、C含有量を極度に制限した低炭素鋼や、炭化物の安定化のためにTiあるいはNbを添加した安定化鋼種が使用されます。
3.応力腐食
- 応力腐食割れは、ステンレス構造物中に応力が残留している場合や、動的な応力がかかるとき、例えば塩素イオンの存在する環境で発生し、微細な割れが多数発生するものです。
- 対策としては、製造最終工程で応力除去熱処理(800℃より急冷)を施したり、Ni含有率の高いオーステナイト系ステンレスを使用します。
4.間隙腐食
- 材料と材料の接触面に異物やスケールが残存した場合、その部分で酸素の供給不足がおこり、局部電池の作用で局部的に不働態皮膜が破壊されて腐食する現象です。孔食とよく似ています。
- この場合孔食と同様、表面を清浄にすることが必要です。
c.腐食疲労
- 繰り返し応力を受けて使用すると、応力の大小と腐食環境によっては短期間で割れを生じることがあります。この現象を腐食疲労といいます。
- 使用する際の応力を材料の疲労限界内にとどめることはもちろんですが、破壊の起点となるノッチ(切り欠き)を作らないように注意する必要があります。
d.高温酸化
- 金属を大気中で赤熱すると、表面に酸化物(スケール)が生じてやがて剥離します。これも腐食の一種であり、乾食といわれています。
- この場合、ステンレスに含有されるCrが耐酸化性に優れた効果があり、一般には高クロム鋼、フェライト系ステンレスが使用されています。
- オーステナイト系ステンレスにも耐熱鋼として広く使用されるものもあります。
ヒーターの腐食は保証外
ヒーターを腐蝕性液体などの加熱にご使用になる場合、ヒーターパイプ(ヒーターシースおよび接液部)の材質、ワット密度の選択には注意が必要です。ご使用になる前にその環境条件において耐蝕性のある金属か、再度ご確認ください。
基本的に材質の選択は、お客様の判断においてなされるものとします。ただし、その選択に当たっては、日本ヒーターの経験・実績に基づいてご相談に応じます。
例えば液体加熱用シーズヒーターの場合ご注文時に特にご指示がないとステンレス(SUS316L)を使用しますが、その材質を保証するものではありません。
その他の材質のヒーターにおいても、腐蝕性被加熱物の加熱におけるヒーター腐蝕による不具合は、全ての製品で「保証外」となりますので、ご了承ください。